カテゴリー別アーカイブ: 伝統技能・技術

【伝統技法(柿渋製法)の実演 記録】

2014年8月12日(火)、八女市立花町の中尾酒店にて「柿渋(かきしぶ)製法」の実演が行われました。

この企画は、NPO八女町並みデザイン研究会の伝統技法の研修会として行われました。

福岡県八女福島地区(重要伝統的建造物群保存地区)では、多くの町家の外壁・柱・建具等に「柿渋」が塗られています。昔は、どの家でも塗られていたと伝え聞かれています。

 

 

そもそも「柿渋」とは何か、ご存知ですか?

柿渋(かきしぶ)は、渋柿の未熟な果実を粉砕、圧搾して得られた汁液を発酵・熟成させて得られる、赤褐色で半透明の液体。柿タンニンを多量に含み、平安時代より様々な用途に用いられて来た日本固有の材料である。発酵によって生じた酢酸や酪酸等を原因とする悪臭を有するが、20世紀末には新しい製法により精製され、悪臭が完全に取り除かれた無臭柿渋も誕生している。

文献で最初に記載されているのは10世紀頃であり、漆の下塗りに使用された記録が残っている。また、衣類に使用したのは、平安時代の下級の侍が着ていた「柿衣」(柿渋色は時に桧皮色とも混同され桧皮着:ひわだぎとも呼ばれた)がその始まりとされる。また民間薬として、火傷や霜焼、血圧降下や解毒などに効くとして盛んに利用された。Wikipediaより)

 

つまり、赤褐色の液体こそが柿渋です。

今回は、その製造工程を見学させていただいたということです。また、その歴史も古いことが知られています。

その原料である「渋柿」を、木から切ってきたものを製造するところを、立花町の中尾酒店さんで見学させていただきました。

 

機械に入れた状態の渋柿

電動機械による「破砕」

この緑色の小さな果実が「渋柿」と呼ばれる原料です。そんなに強い臭いはしませんでした。
すごく小さいですよね。これ、少しだけ口に入れましたが、渋いです。。

八女地方では、8月上旬〜お盆過ぎまでが収穫時期とのことで、この2週間しか渋柿は取れません。
ですので、少し昔までは、この時期に渋柿収穫が集中的に行われていたのでしょうから、すごく慌ただしかったのでしょうね。

ちなみに、柿渋づくりの手順は「洗浄」「破砕」「搾り」「ろ過」「発酵」となります。

渋柿を機械に入れるー1


まずは、渋柿を写真のような歯車の付いた機械に入れて潰します(電動です)。
この機械は、なんとお父様が昭和20年代後半に自作されたそうです。もうかれこれ60年が経過!

特徴は、なんといっても移動ができることにあり、
リアカーに乗って、城島の酒蔵までこの機械と渋柿を運んで、現地で製造されていたそうです。

伝統的には、臼と杵で潰されていましたが、この中尾商店さんでは機械によって、
移動可能になり、現地で柿渋を製造することになったそうです。

渋柿を機械に入れるー2

 

このように機械の中に渋柿を入れたら、あとは機械で潰してくれます。
ゴトゴトといって歯車が回り出し、中に設置された長野石が渋柿を潰してくれるという仕組みになっていました。

 

「絞り」、「ろ過」、そして「発酵」 渋度の測定器具を活用

渋柿(手前の入れ物の中)、奥がつぶしたばかりの渋柿が入った容器

 

潰した渋柿を青い容器の中に入れて保管しておきます。
出来上がった柿渋は手前の四角い容器です。

渋度を図るための道具

 

写真で中尾さんが持っている道具は何かというと、「渋度(しぶど)」を測定する棒目!
「渋度」って初めて聞かれた方もいらっしゃると思いますが、その名のとおり、渋さの度合いのことだそうです。
つまり、度数が高いほどシブくなり、度数が低いほどシブくない、ということですね。
一般的に売られている柿渋の渋度は「2.5」以上は必要だそうです。

 

今回の実演の前日に製造された渋柿は「4.5」程度ありました。
「渋度」が高ければ、水を入れたり、「渋度」の低い柿渋を混ぜて、濃度を下げるのだそうです。

 

渋柿をつぶした状態

完成した柿渋はプラスチック容器へ

 

完成した柿渋は発酵した状態のため、すぐに密封容器に入れることはできません(破裂してしまうようです)。

また、期間が経てば経つほどに、色も濃い赤褐色になるそうで、建物の外壁に塗るには、期間を経たものが良さそうです。

そして、醤油瓶や鉄製の容器には入れないように。すぐに黒くなってしまうのですよね。

 

八女地域での柿渋づくり

八女地域でも、古来から柿渋が様々な用途に使われてきましたようです。

建物の木部に塗られていることは前述したとおりですが、和傘、漆器、布製品、紙製品にも塗られていますし、

酒蔵の酒樽にも用いられていたそうで、柿渋が入った酒樽は、お酒の沈殿の様子が全く違うそうで、要するに「おいしい」お酒ができるのだそうです。昔は、どの酒蔵も柿渋を用いられていたそうです。

ただ、現在は新しい素材に変えられているところがほとんどなので、その味を確かめることは困難とも言われていました。

また、漁師網にも柿渋が塗られていました。防腐効果や強度アップのためかと思っていたのですが、なんと柿渋の色は「魚の目から見えにくくなる」効果もあることから塗られているとのこと。

なるほど。魚が見えにくいので、網にたくさん引っかかるのですね。

その他、現在ではテニスのラケット(ネット)にも塗られているようです。

 

つい数十年前までのまちなかの光景には、柿渋売りといわれる方々がリアカーで販売に歩かれる様子がありました。

暑い日には、アイスを食べながら柿渋を売られたそうです(アイスを買うお金がなければ柿渋と交換されたそうです。もちろんそのアイスと交換した分の柿渋が減れば水を足したこともあったそうです!・・・今考えると、「渋度」は当然下がりますので、いわゆる・・・ちょっとした詐欺ですよね。(笑)

中尾さんご夫婦

現在、八女で柿渋の製造が行われているのは、ここ中尾さんだけともいわれています。

中尾さんがつくられた柿渋は、八女市観光物産館にて買うことができます(塗り方のレシピ付き!)。

 

可能であれば、その技術・製法を後世に継承していきたい、とすごく思わされた見学でした。

本当にありがとうございました。

 

【伝統技法(焼杉板)の実演 記録】

2014年8月7日(木)、八女市高塚の中島建設作業場にて「焼杉板(やきすぎいた)」の実演が行われました。

この企画は、NPO八女町並みデザイン研究会の伝統技法の研修会として行われました。

福岡県八女福島地区(国選定 伝統的建造物群保存地区)では、多くの町家の外壁側面に「焼杉板」が使用されています。今回は、それら外壁に使う焼杉板の実演ということです。

 

焼杉板って何か、ご存知ですか?実際に焼いてみましょう

西日本、特に瀬戸内海沿岸で多く残っているといわれる焼杉板。伝統的な木造家屋(蔵)の外壁として張られている焦げた黒い板のことです。

その製法ですが、まず3枚の杉板(今回は3mと2mの材料での実演でした)を合わせて正三角柱になるようにします。

杉板を3枚 組み合わせる

針金・釘で3枚を固定する

 

針金をくるっと回して止めて、釘でも止める。これで板が煙突状になりました。

針金だけだと、端がきちんと燃えないとのことで、木材同士を釘でも止められています。

次に、三角柱を立てます。下部は空洞にしておくことがポイント。

 

三角柱を立てる

 

準備完了です。実際に焼いてみました。

中に火をつけるため、新聞紙を丸めて、いくつか入れます。そして、下から新聞紙に火をつけます。少しの時間、何も起こらないなぁと・・・少し見ていると・・・

上部から煙

 

・・・煙が出てきました!

ただの杉板の煙突に見えるのですが、中ではすごく上昇気流が生まれているようです。

 

上部から出る炎

 

もう少しすると、煙突の先から炎が上がりました!

 火柱、とにかく炎が上部に出ています。この杉板の長さは3mですから、炎は1m以上は軽く超えていたと思います。

 

倒して水をかけたら完成

焦げ方がちょうどいい頃合いを見計らって(これが結構難しいみたいですね)、横に倒して、水をかけ、止めていた針金を外すと、バタン!と焦げた面がすべて上を向いて煙突がばらけます。

見事に出来上がりました。

 

 

倒して、
針金を外して、パタン。

 

あとは、燃えた面同士を重ねて置いておくと、次の日にはだいたい平らになるので、そのまま壁材として使えるそうです。

そんなに難しくない手順でした。

 

 

 

炎が上がるのは煙突効果のおかげ

でも、なぜ新聞紙だけで、ここまでの炎があがるのか。

煙突効果(えんとつこうか)のおかげだそうです。

煙突効果(英: stack effect)とは、煙突の中に外気より高温の空気があるときに、高温の空気は低温の空気より密度が低いため煙突内の空気に浮力が生じる結果、煙突下部の空気取り入れ口から外部の冷たい空気を煙突に引き入れながら暖かい空気が上昇する現象(wikipedia 参照)。

さらに、焼き杉の場合は、煙突自体の内側が3面とも燃えて板同士の熱が加わっ て一気に燃えるという仕組みなのだとか。

 

焼杉板と伝統的な建物(八女町家)

少し、NPO理事長に聞いてみました。

-「そもそも、なぜ杉板を燃やすんですか?」

「木材は、そのままだと風雨で劣化するのが早いけんね。やけん、表面を燃やして炭化して、燃えにくしたり、腐りにくくするったいね。」

-「なるほど。防火・防腐の効果があるんですね。それでは、どれくらいの期間、持つんですか?」

「いろんな条件で変わってくると思うけど、大きなことがなければ40,50年以上は持つと思うけどね。」

わずか5分くらいの作業で、何もしなければ数年で劣化してしまう杉材を、50年以上も使えるものに仕上げることができる。

-「焼き杉の起源は、何なんでしょうか?」

「うーん、正確なことはわからんねえ。瀬戸内海の方は結構やってあるみたいやけどね。木造船を丈夫にするように焦がしたのを家屋に応用したという話を聞いたことはあるけど。あとは、鯨の脂を焼いた上から塗りよったというのは聞いたことあるけどね。本当のルーツが知りたかね。」

こんな技術が忘れさられようとしています。

いまは、ガスバーナーで焼いている焼き杉が多いそうです。どっちも焦げてるから同じと思うんですが、ガスバーナーでは浅くしか焦げず、しっかりとした黒い色にはならないようです。

 

伝統的な焼杉の炭化層は厚いので長い年月にも耐えられるそうです。しかも、伝統的なものは真っ黒で風合いも出て、表面の凸凹も面白くなっています。外壁に張ってあるのを見ても、すごく面白いですね。

ただ、真っ黒すぎて、施工は大変そのものだそうで。手も口も、(もしかしたら肺までも・・・)黒くなりながらの作業は、本当に大変そうです。

施工業者に焼杉張りを頼んでも材料の指定無しの場合は、ガスバーナー焼の既製品にしてしまうことも多いそうです。(たぶん、浅いほうが炭が他の部分について汚れにくいから)

 

「昔はね、家ば建てるときは、自分で木材を仕入れて、乾かして2年くらいはかけて建ててたもんやけど、いまは3ヶ月ぐらいで建ててしまうようになっとるけんね」

プレハブ住宅や簡易的な構造による住宅建築の波に押されて、戦後〜40年前くらいから住宅に焼杉を使うことはほとんどなくなったそうですが、最近は、焼杉に注目した建築家が出てきたりして見直されてきている動きもあるようです。藤森照信さんのラムネ温泉館などです。

 

八女福島地区で、現在修理中の町家の外壁にも、焼杉板が張られています。

ぜひ、現地の八女福島にて、見学いただければと思います。

【第5回 伝統技法(柿渋)の研修会】

NPO八女町並みデザイン研究会の伝統技法の研修会として、柿渋の製法について学びます。

八女地方の多くの民家では古くから柱・梁・建具・床・板壁の木部に柿渋とベンガラや松煙を混ぜて塗られています。今回、八女市内で唯一、柿渋の製法をされている立花町の中尾さんにお願いして、柿渋絞りを見学させていただくことになりました。

 

柿渋

柿渋塗り(横町町家交流館)

 

柿渋を用いて、建物の下地に塗る、漆器の下地に塗る、布を染める、紙に塗る、漁網を強化する、酒を濾過する・・・。

先人たちは長い歴史の中で、柿渋に含まれる「タンニン」が「発酵」という過程を経て、様々な効力を発揮するに気付き、生活の数々の場面に活かしてきたのです。

柿渋づくりは広く日本全国で行われていた、大変古い時代からの日本人の知恵であり、驚くほど多様な用途に使われ、いかに重宝されていたかがわかります。

かつては、全国のどの地域でも盛んに柿渋が作られていましたが、だんだんと化学塗料・化学接着剤などに代わってしまい、作られなくなってしまいました。

八女では、この中尾商店さん一軒のみが柿渋製造を続けておられます。

急ではありますが、お申し込みの上、貴重な機会ですので、ご参加いただきますようご案内申し上げます。

 

日時:平成26年8月12日(火)16:00~

場所:中尾酒店(八女市立花町下辺春)

集合:八女市役所に15:30集合(乗り合いで現地に行きます)

参加費:無料(八女市役所にはご自身でお越しください)

申込み先:info@yame-machiya.net (お名前、ご連絡先(お電話番号)を記載の上、申込みください)

 

 

 

 

【第4回 伝統技法(焼杉板)の研修会】

NPO八女町並みデザイン研究会の伝統技法の研修会として焼杉板の製法(焼き方)について研修会を行います。
八女福島では多くの町家の外壁側面に使用されています。
急ではありますが、お申し込みの上、ご参加いただきますようご案内申し上げます。

日時:8月7日(木)10:00~
場所:中島建設(中島正隆)作業場 八女市高塚745
※駐車場は同作業場南側を借りております。

申込先:info@yame-machiya.net(お名前、ご連絡先をご記入ください)