NPO法人 八女町並みデザイン研究会

団体所在地:〒834-0031八女市本町315番地

(0943-22-5804(中島孝行アトリエ)

E-mail:naka-atelier-97@wind.ocn.ne.jp

理事会等:理事9名(理事長・中島孝行)

会員数:正会員53名(内訳:設計士15、工務店36、行政マン2)

年会費:正会員3,000円、賛助会員10,000円

設立年月日:平成12(2000)年4月

1.NPO八女町並みデザイン研究会の活動

● 設立の経緯

市民の町並み保存運動は、八女市の行政を動かし、1995(H7)には建設省(現 国土交通省)の街なみ環境整備事業(以下、街環事業)で町家の修理・修景事業が始まり、2002(H14)には国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、文化庁の保存修理事業(以下、伝建事業)も始まりました。

しかし、初期の修理・修景事業では八女福島の伝統様式に沿わない事例も少なくはなく、地元住民も福島らしさがないと意識するようになります。補助事業による修理・修景事業について地元の建築士及び工務店等が八女福島の伝統様式や伝統構法の知恵を共有し継承していく必要性を痛感し、当時の市の担当者である北島力氏と共に先進地視察や研修会等に参加し、他地区の町並み保存の取組みや体制づくりを参考にして、福岡県建築士会八女支部の会員に呼びかけ、2000年(H12)に「八女福島町並みデザイン研究会」を設立し、4年後には社会貢献団体としてNPOの認証を受け、名称を「八女町並みデザイン研究会」と改め、また、2009(H21)黒木の町並みが重要伝統的建造物群保存地区に選定されたことから、黒木町居住の会員を拡大しながら活動しています。

● 活動内容

伝建事業、街環事業を活用した伝統的な建造物の修理・修景事業において、技術的な支援を行うなかで八女福島の伝統様式や伝統構法を習得し継承していくことを基本に活動をおこなっています。

1)小学生伝統構法体験学習会

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小学生の土壁塗り体験学習会

未来を担う子どもたちに町並みや伝統的な建造物の歴史・文化を継承していくことが重要と認識し、学校と連携して地元福島小学校の6年生を対象に町並みに関する出前授業及び体験学習会を実施しています。出前授業は、体験学習の前にプロジェクターを使い、八女福島の歴史や町家の特徴、伝統構法等について説明します。体験学習会は、修理中の町家の現場で行いますので、まず、施主の許可をもらい、現場の進み具合を見ながら学校と日程調整をして行っています。土壁塗り体験では左官職人が手本を示し、子どもたちは素手や鏝で土を塗っていきます。すぐに泥だらけになり学習というよりは泥遊びになって行きます。最後に、昔の棟梁が棟札を上げたように土壁に自分の名前やメッセージを刻み終了です。他に土間の三和土や板壁のベンガラ柿渋塗りの体験学習も行っています。子どもたちには郷土の歴史文化への誇りと愛着を持ってもらい、引いてはこの中から伝統構法にたずさわる職人等を夢見ることを願っています。

2)学習会・研修会

伝統構法の技術習得として修理・修景事業の現場を利用しての学習会や他地区の技術者と交流を目的に見学会や研修会に参加しています。設計担当者会では伝統構法の設計単価(代価)の検討会や痕跡調査・履歴調査の学習会も行っています。

3)修理・修景事業の設計監理と施工

八女市では、伝建事業、街環事業の補助事業として年に9~10棟の修理・修景事業を行っています。それを会員が設計監理及び施工にあたり、設計監理の担当は会員の中から希望者を募り理事会で決め、施工の担当も希望を募り1物件3~4施工者による競争入札で決定しています。特に設計においては入念に時間をかけて現況調査・履歴調査を行います。特に、設計においては、施主や市担当者と十分な協議を行い、また、大学の専門家(伝建審議会の学識経験者)の指導も受けながら取組んでいます。また、修理・修景した建造物のデータベース化も少しずつですが進めています。

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修理建造物の履歴調査

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修理前の居蔵の町家(T家)

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修理後の居蔵の町家(T家)

4)その他の活動

他には、地元住民向けの無料相談や修理・修景後の見学会等も定期的に行い、修理・修景事業や伝統的な建造物の維持の普及活動、市からの要請された伝統的な建造物の家屋調査(履歴調査)活動も行っています。

●   今後の活動

年々修理技術は向上していますが、充分ではありません。痕跡・履歴調査の充実を計り、文化財として、より正確な修理を目指すと共に失われつつある伝統の技も再生し、次代に継承するシステムづくりや職人の育成も急務なことです。また、八女福島及び黒木の町家等にとどまらず、地域に存在する多くの伝統的な建造物の保存再生をも考慮した活動も展開したいと思っています。全国的に技術の継承・職人の育成については深刻な問題で、京都の作事組さん・姫路の町家再生塾さんと共に呼掛け人となり「作事組全国協議会」(伝統工法の技術・技能者の集団としての全国組織)を2009年2月に発会し、全国の方と伝統技術の課題を少しでも克服すべく連携を深めています。

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作事組全国協議会・シンポ(八女市開催)